
「ハヤテとのディナーはどうなるのか」、「ヒナの告白の成否」については、他の感想サイトでも検証されているだろうし、自分でも所々で語ったところがあるので、詳しいところは割愛したいと思う。
しかし、あえてまたヒナの告白について述べるのであれば、恐らく告白は失敗するであろう。今現在のヒナのことを考えれば、よっぽどのタイミングと内的動機が刺激されなければストレートな言葉に出来ないであろうし、それを成そうとしても、今までのように空回りっぷりがまたも再現される可能性が大いにある。更にもしハヤテがアテネのことについて語りだせば、彼の中に誰が棲んでいるのかハッキリと読み取って告白する前に玉砕するだろう。
そして何よりも、今のハヤテは「ハヤテは相手の気持ちについて鈍感でいる」ということが前面に押し出されているので、よりストレートな言葉で自分の気持ちを伝えなければならないし、告白されたとしても決していい結末を迎えるとは思えない。それは、ハヤテの「ヒナギクを接待する」という言葉からも推し量る事が出来る。
旅行の話の中で、「ヒナギクの告白の回」が挿入され、読んでいくうちに幾つかの疑問が生まれる事となった。それらは物語りの構成と流れに関することであり、それらをアテネFC(アーたんFC)の記事として書き記したわけであるが、あまりにヒナの事についての記述が多いので本館に投下する事にする。
以下、気になったところのが書き記してみる。
何故このタイミングでヒナギクの告白の話を持ってきたのか
ここから物語をミクロ視点からマクロ視点に切り替えてみる。今回のディナーの話は、桂ヒナギクという人物にとっては一大イベントなわけであるが、物語りの大きな流れとしてはどのようなポイントになっているのであろうか。ミコノス編が終わりギリシャ編が始まる第231話から再読してみるとおぼろげながらその意味合いが見えてくる。
ゴールデンウィークの旅行が始まる前から、ギリシャのアテネにて天王州アテネが登場するという布石はうたれていた。彼女が登場する―または登場するのであれば、それに連なってロイヤルガーデンに関する話が必然的にセットでついてくる。ミコノスにおいてロイヤルガーデンと石について触れられたが、未だにロイヤルガーデンがなんであるか、石の働きは何なのであるかなど謎が多く残されている。三千院帝が咲夜を派遣したりといった動きはあるが、ハヤテたちの旅行が終盤を迎えつつある今、それらが全てクリアーになるとは考えにくい。
ここまでくると今回の旅行の話は、全ての謎解きというよりも伏線を幾つか回収した上でのある一つの基盤作りを試みているのではないかという事が考えられる。その一翼として選ばれたのがヒナギクなのである。今回の彼女は、ハヤテをアテネに繋がらせるためのバイパス的な役割をになわされたといってもいいだろう。そしてそれは、ヒナギクの口からアテネの名前が出てくる231話からの延長なのである。
さらに、マリアがハヤテに相談するようにけしかけたわけであるが(本人の勘違いであるが)、このような行いもバイパスを構築するための下準備であったように思われる。アテネとヒナギク、ハヤテを一つの線で結ぶための構築が、この「ヒナギクの告白」の話で行われようとしているのである。
「何故このタイミングでヒナギクの告白の話を持ってきたのか」という疑念に話を戻すが、このような話を持ってきたのは、ハヤテとヒナギクだけの場を作り出したかったのではないだろうか。両者にはアテネという共通人物がいる。今現在のところ、アテネとの関係が浮き彫りになっているのはハヤテとヒナギクだけなのである。ヒナギクとアテネの繋がりをハヤテは認識し、ヒナギクの立場からはアテネとハヤテの繋がりはそれほど重要なものとして捉えていないが、ここでハヤテとアテネの繋がりをより強く確認する事になるだろう。そして、三人の様相と繋がりを際立たせるためには、他のキャラクターが入り込めない隔離された場が必要だったのではないだろうか。そして、それによって今後のヒナギクの新たな役割と立場を確立させようとしているのように思える。勿論、ヒナギク当人にとってもこの話はステップアップの様相が強いのである。
桂ヒナギクのこれからの役割
ヒナギクを媒体としてアテネが白皇学院と関わりがあるということと、「ヒナギクがアテネと交流があった」という事実(設定)が234話で明らかにされた。同じ白皇学院に在籍していながらも泉達は、天王州アテネを知っていても交流を持つことは出来なかったが、ヒナギクだけは交流を持つことが出来た。「アテネとヒナギクは交流があった」―このことは、この先物語を進めていく上での基盤を構成する一つの要素になるのではないだろうか。
ロイヤルガーデンの中の話で、「白桜」と「黒椿」という対を成す剣がある。このことについても未だ語られる事はないが、「白桜」が「正義をなすため」であるのならば、もう一方の「黒椿」は「悪をなすための」のものか。この剣のように「対を成す」設定が出てくるのならば、それらを使いこなす「対を成す」設定が出てくるのは当然であり、その設定に今のところ最も近しいのは、他ならぬお互いに友人(?)設定をもつヒナギクとアテネである。
ハヤテとアテネがいずれ対立するということはわかっている中、恐らく物語中文武ともに最高スペックをもつある意味ラスボス的なアテネにハヤテと共に対抗できる既存のキャラはヒナギクのみ。更にいえば、アテネとも関わりがあり、ハヤテとアテネとの対立構造がより形成&より明確に形成された場合、ハヤテのサポート役としてそのポストに収まり、アテネと拮抗できるスペックを持つのは今のところヒナギクなのである。
不気味な存在 ここで気になるのは、天王州家と浅からぬ因縁を持つ三千院家ゆかりの者―つまり三千院ナギが、この話に全くといっていいほど関ってきていない。彼女は、ロイヤルガーデンに関わりはないのだろうか。
更に今1番不気味であると感じているのはマリアである。彼女は、ヒナギクを凌駕するほどの文武に秀でた人物であり、ハヤテの過去編において登場し、少なからずともロイヤルガーデン、またはアテネとの関係性があるように思えるが、それらの係わり合いはおろか、その素性すらはっきりと明かされていないし、所々で関ってきているとはいえ、重要な出来事には踏み込んだことには一切ない。
未だに不気味に沈黙を守り続けるマリアさんの図
ハヤテのサポートとして申し分のないスペックを持つマリアであるが、ここまで何も明かされないとなると逆に不自然である。彼女には、アテネやハヤテのことよりももっと他に重要な役割が与えられているのではないだろうか。だからこそ物語りの根幹に関わりそうな事には、彼女は登場しないし、あまり登場しない。話に踏み込めば一気に物語が加速する可能性が高い。来るべき日に備えて、物語りの根幹から遠ざかされているからこそ彼女は主にコメディ要員として扱われるしかない境遇なのではないだろうか。
マクロな視点でヒナギクの告白の話を捉えると、告白の成否はあまり関係がないように思える。これは、あくまで後に続く話の地盤固めの様相であり布石なのである。
恐らくこの話の後にアテネとハヤテとヒナのラインが明確に繋がるのではないかと考えているが、どちらにせよヒナギクにとってはあまりいい方に話は転ばないだろうし、最悪、泪で枕を濡らす結果になるかもしれない。
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