
ハヤテの心の中を象徴するかのように降りしきる雨が彼を冷たく濡らす。
全てを自分のせいであると思い込んでいるかのような自責の念に追われるハヤテ。それはそうだろう。あのときロイヤル・ガーデンを出て行った後のアテネの言葉を知らないのだから。ハヤテを追い出したときの言葉と彼が出て行ったときの言葉。その両方が彼女の本音だったが、ハヤテは前者の言葉しか聞いていないのだから。
あのときアテネから投げかけられたのは、彼をこれから蝕む呪いの言葉だった…。
兄からかけられたこの言葉は、今のハヤテにとって唯一の道標であり、救いだったのだろうが、今すぐにハヤテの心が澄み渡る事はない。彼の心が澄み渡るときがくるのならば、それはアテネに謝罪と感謝の言葉が伝わったときなのだろう。それまでは今しばらくは彼の心の中で雨はやむことはないのだ。時々思い出されるあのときの想い出は、また彼の心の中に雨を降らせる。それも彼が自分の罪を忘れないための呪いなのだ。
そして、このときから心を鈍感にすることを選んだのは、彼が人と深く関わることを避けるためなのだろう。
また人と深く関わってアテネと同じような思いを自分は味わいたくない。その相手を傷つけたくない。だが、そういった他者への思いより、なによりも自分が傷つきたくないということのほうが大きいのかもしれない。それほどアテネとの別れは彼に深い傷跡を残したのだ。
しかし、自分がいくら心を鈍感にしていても心を寄せようとする人たちが彼の周りで増えてきた。そう、そして自分を守るために心を鈍感にしたが為に、その心を寄せる人たちが傷つくことになっているのを彼は気がついていない。いや、心の中では既に気がついているのかもしれない。
だが、彼は認めるわけにはいかない…。
彼は認識するわけにはいかない…。
それに気がついてしまったとき、彼はまた罪に苛まれる事になるのだから…!! そして刻の振り子は現代へと戻る…。

かつて手を差し伸べられた少年は、今度は手を差し伸べる側になった。
かつて相手に感謝をしていた少年は、今度は感謝される側になった。
今考えるとハヤテはアテネとナギを重ねているのではないだろうか。所々でナギの言動や行動でアテネとダブらせることはあったが、あの時ハヤテがアテネに出来なかったことをナギに還元させている様に思える。
それにこの話を通して改めてナギとハヤテをみると、ナギとハヤテの関係は、アテネとハヤテの立ち位置を逆転したものととらえることができるのだ。
ナギを通してかつて出来なかったこと、守れなかったことを遂行していくその姿は、ハヤテが無意識で行っているアテネへの罪滅ぼしなのかもしれない…。

純白のドレスから漆黒のドレスに身をつつみパルテノン神殿の丘に立つアテネ。
白を基準とした色から黒に変化したのは何か彼女の中で変わったことがあったからなのか。
ギリシャの自らの名を冠する都市・アテネにいるのは、閉じてしまったロイヤル・ガーデンへの道を再び開くための鍵を探すためなのか。
何故ロイヤル・ガーデンから外に出られた?あの棺の中に何があった?帝の狙いとは?アテネは何を求めているのか?
今はまだわからないが、それは後に語られることなのだろう。
ハヤテとアテネの道が再び交差するときがくるときをひたすら待ちましょう。
・総評
私的にはすっげーおもしろかった!10週という長い話数でしたが、これくらいは必要だったのでは?
またまた伏線が色々と張られたり、過去編を見てハヤテという主人公を見る目がかわってしまったりと障害(?)が出てしまいましたが、それでもこの話は物語の根幹を成す重要なものであるはずですし、これがなければ物語が進まないはずですのでタイミング的にはよかったのではないでしょうか。
ただ、ラストのアテネを見てしまうと、またすぐに登場して欲しいと思ってしまいますが、彼女が登場するということは、この作品のフィナーレが近いと思わされてしまう微妙なラインになってしまいますね。
アテネが出てくるのは嬉しいけど、彼女が出てくることは、この作品の終着駅が近くて物語が終わってしまう合図である。だけどアテネとハヤテの邂逅が見たい。でもそれだと…。
以下無限ループです。
ああ…それでもアテネとハヤテの邂逅が見たい!!
~お遊び編~感想実は今回感想が2つあったり。
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ただ現代のナギについて
なんで休みの時に限って早起きなんでしょう・・・いつも学校休んでいるのに・・・。
アテネについてはこの作者の事だからなにか絶対に伏線がある気がするんですよね・・・
いや・・・・考えすぎでしょうか?
>あんなひどい両親なのにこんな良い(心や性格のやさしいと思われる)子供ができるのかがまったくわかりませんね・
では、逆に何故「心優しい」両親から「ひどい」子供が育つという現象が起こるのでしょうねw
答えは簡単。物事は一律ではなしえないからです。様々な要因、因果が複雑に絡まって物事は成り立っています。
恐らくwentさんは「両親と子供の構図」にしか目が行っていないので、コメントのような心境になっているのではないでしょうか?
ごめんなさい。こうゆうの社会学の癖なんです。悪気はないんです。発作なんです。wentさんが純粋なのでつい発作が起こってしまうのです(汗)
>なんで休みの時に限って早起きなんでしょう・・・いつも学校休んでいるのに・・・
「学校を休む」のと「学校が休み」ということを区別しているからなのかもしれませんね…。
アテネについては、『ハヤテのごとく!』という作品の根幹なので伏線がめいいっぱいですよ~。